弊所は、1995年にITサービスを中心に活動する事務所として開業し、三菱銀行で培った技術力をベースに、 ダイエーグループの物流システムを丸ごと再構築するプロジェクトを中核メンバーとして完遂させ、その後も日本コロムビアで音楽産業の情報化に取組んだほか、証券、損保、自動車、流通、建設と、様々な業界の情報化プロジェクトに携わってきました。
ここ10年ほどの技術革新には目を見張るものがあり、当初は「我先に」と競うようにクラウド化を推し進めた企業が多かったように思いますが、 最近では、オンプレミスに戻す動きが各所で見られるようになってきましたね。
その背景には、 適材適所でのクラウドやAIの活用は企業の効率化に寄与するものの、 情報漏洩のリスクや自社の風土や独自性が失われていくことに対する不安など、クラウド依存の弊害に悩まされる企業が急激に増えていることがあります。
国際情勢の変化に伴い、外国企業が運営するデータセンターを利用することのリスクも顕在化してきていることもあり、 クラウドの利用を許可する場面の明確化なども含めたIT戦略の見直しが必要と考える企業が出始めているということでしょう。
日本企業では、業務におけるクラウドの活用や生成AIの利用についてはすでに評価フェーズに入っている感もあり、 「時代に取り残されない」ということの本当の意味を考える力が、いま改めて試されているのだろうと思います。
中堅中小企業においては、クラウドやAIの活用が、企業そのものの存続をも危うくしかねないケースも散見されます。
経営陣の知識や理解が不十分な状態で、ひとりのIT担当者の虚栄心に振り回され続けることになれば、 クラウド費用は年々増え続け、ITベンダーにも足元を見られてカモにされることになり、 「気が付けば以前の十倍以上の費用でITを運用するはめになってしまった」という悲惨な話も、今では珍しいものではなくなりましたね。
リテラシーの低さが企業の信用を失墜させる事例も後を絶たず、 ITベンダーが説明する安全性を鵜呑みにして、 会社を特定できる情報や個人情報を含んだファイルを何の躊躇もなくクラウドにアップロードしてしまったり、 NDAを締結しているにもかかわらず顧客の機密情報やソースコードなどの専有情報ををAIに入力してしまったり、 戦略企画会議の要約をAIに任せてしまうような危険な社員に対して、 中堅中小企業では適切な教育も指導も責任の所在の明確化もほとんど行えていないのが実情ではないかと思われます。
AIの活用によって、会議資料や広報資料、提案要求書、モックアップ、プログラミング等の社員個人の業務ではリターンを享受できたとしても、 企業にとって最も重要となる経営戦略の実現や競争力の強化といった側面ではビジネスリスクを高める結果となってしまう可能性も否定できないことから、 機密情報の漏洩対策を施すことを前提に、生産性の向上や、データドリブン経営の強化といった面では役立つツールとしてAIを活用しつつも、 自社の風土や社員の創造力を見つめ直して、「自社本来の存在価値」や「自社らしく在ることの強さ」を再認識し、 経営資源を再配分する動きが加速していくことは間違いないでしょう。
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