遺言エール吉祥寺

遺言書作成マニュアルの目次


《 原稿作成に必要となる基礎知識 》


《 出来上がった原稿を遺言書にする 》


《 一発で安心確実な遺言書にする方法 》



まずこれだけは知っておこう

「実現する遺言書」に必要なことは何ですか?

  1. 法定の要件を充足していること
  2. 法律用語をしっかり理解して使い分けること
  3. 遺留分、寄与分、生前の資金援助、不記載財産などで、付け入る隙を与えないこと
  4. 不明確な表現は避けること、法律のグレーゾーンに立ち入らないこと
  5. 相続法務や裁判例と矛盾しないこと
  6. 自分が死んだあとに実現してくれる人(遺言執行者)を指定しておくこと

 自作の原稿を作成したら、これらをクリア出来ているか、専門家のチェックを必ず受けるようにしましょう。

作るなら公正証書遺言ですよね?

 いいえ、公正証書遺言も自筆証書遺言も、法的効力はまったく同じです。内容が同じであれば、どちらも同じように実行されます。 認知症などで遺言書自体の有効性を争って裁判になる心配がないのであれば、費用がかからない自筆証書遺言で十分なケースがほとんどでしょう。 公正証書遺言は、公証役場で作成する際に手数料がかかります(相続財産額と相続人の数によって5万円~20万円程度が一般的)が、重厚で本物感があります。 好みでお選びいただければよろしいかと思います。

そもそも遺言書とは何ですか?

 遺言書は民法で定められており、一定の形式で書くことで法的な効力が生じ、法定相続より優先されます。 世の中にひとつとして同じ相続はなく、法定相続分で分ければいいという訳にはいかないものです。 家の中だけで財産を引き継ぎたい、負の遺産を残したくない、事業の経営を分散させたくないなどの心配事も、遺言書で多くのことが解決できます。 将来の約束をすることと引き換えに受け取れることも沢山あります。遺言書の作り方ひとつで残りの人生をより楽しいものに出来るかもしれません。

揉める相続って実際どのくらいあるの?

 毎年1万5000件以上の相続が裁判所のお世話になり、その多くは相続税がかからない少額の相続です。 相続人が複数いれば必ず揉めると思っていただいて差し支えありません。 相続のトラブルが特に多いのは、親が要介護になり、子供にキャッシュカードを預けるような場合です。 親のサイフと子のサイフが入り交じり、使途が不明確になることがトラブルの原因になりやすいです。 生前から法定相続分を意識しておカネのやり取りをしている人など何処にもいませんが、 遺産分割のときには生前の資金援助も含めた話し合いになりますから揉めて当然なのです。 遺言書を作成しておくことで、これらのほとんどの問題が解決できます。

遺言書作成に関する実態調査

【 日本財団による実態調査 2016年 】

 40代、50代の方が多いのは意外に思われるかもしれませんね。 自筆証書遺言が4分の3ですが、多くの方はリーガルチェックを受けるか、原稿だけを専門家にお願いして作成しています。


令和元年7月施行法改正の要点


 令和元年7月から法改正で大きく変わった相続。これから作る遺言書は、それに合わせて遺言設計を変更する必要があります。 遺言書を作成する際に考慮すべきポイントもガラリと変わり、細かい設計が必要となります。

  1. 財産目録はパソコンで作成OKになりました
    自筆証書遺言に添付する財産目録はパソコンで作成できるようになりました。

  2. 故人の預貯金をすぐに下せるようになりました
    一定の範囲までなら、個人の預貯金を遺産分割協議が終わる前に引き出せるようになりました。 ただし、平成29年4月6日に、預貯金も「遺産分割」の対象と判断されているため、 遺産分割協議で揉めたり、遺言書があっても一部の相続人が異議を唱えて執行に支障が出た場合は、遺産分割ができなくなる恐れがあります。 「認知症」「寝たきり」「行方不明」「同意してもらえない」等の理由で、全員の署名を集められないことが予想される場合には、 遺言書を作成して遺言執行者を指定し、遺言執行者が単独で手続き出来るようにしておくことは極めて重要です。

  3. 遺留分を請求されたら金銭で支払うことになりました
    今までは、財産に不動産が多くその不動産を誰かひとりが相続して遺留分を請求された場合、今までは不動産を共有することが多かったですが、 それでは権利関係が複雑になり売却ができずに不都合が生じていたため、2019年7月からは、不足分を金銭で支払わなければならなくなっています。
    場合により生命保険などで金銭を用意してあげる必要があります

  4. 介護などに尽力した人は相続人に金銭を請求できるようになりました
    今までは長男の嫁が介護に尽力したとしても相続権はありませんでしたが、6親等以内の血族または3親等以内の姻族とその配偶者であれば相続人に金銭を要求することができるようになりました。 事実婚や内縁など、戸籍上の親族でない場合は従来通り請求できません。
    遺留分計算に影響します

  5. 配偶者に贈与された自宅は遺産分割の対象以外になりました
    結婚20年以上の夫婦なら、遺言で譲り受けた住居は相続財産から除外され、住居を離れる必要がないだけではなく、他の財産の配分が増え、老後の生活の安定につなげることができるようになりました。
    遺留分計算に影響します

  6. 遺言執行者の権限が明確になりました
    今までは有利な相続人や受贈者が遺言執行者になり、やりたい放題の相続になってしまうケースがありました。 改正法では、遺言執行任務開始時の通知の義務化、相続人ではなく被相続人側の立場にあるべきことの明文化、 相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有することの明文化がなされ、 中立・公正に、遺言者の遺志や遺言の内容を実現するために権限を行使することが、遺言執行者の任務となります。 相続人や受贈者が遺言を執行した場合は、他の相続人から利益相反を理由に無効を主張される可能性があります。 遺言執行者を指定する際には、相続人・受遺者ではなく、利害関係のない第三者に依頼することが求められるようになっています。
    遺言執行者の指定に注意が必要です

  7. 不動産の登記が義務化されました
    今までは遺言で不動産を相続した場合、登記をしなくても権利の取得を主張できましたが、不動産の流通に支障をきたすことがままありました。 法定相続分を超える分については登記がなければ所有権を主張できなくなりました。

  8. 配偶者は、居住権を取得すれば、所有権が別の相続人や第三者に渡っても自宅に住み続けることができるように
    2020年4月に配偶者の居住権が新設され、居住期間は遺言や遺産分割の協議で決められ、居住権は施設に入所するなどしても、譲渡や売買はできなくなります。

  9. 遺言は自筆証書で十分になります
    自筆証書遺言は遺言書の存在が相続から何年も経過した後に発見されて遺産分割協議がやり直しになったり、発見した者が変造したり破棄してしまって遺言が執行されない危険が付き物でした。 2020年7月からは、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が導入され、法務局に預けた場合は裁判所での検認も不要になります。 また、財産目録だけですがパソコンでの作成も認められ手書きの負担が軽減されます。 これで、高額な手数料を払って公正証書にする必要性はほとんどなくなりますね。

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原稿作成に必要となる基礎知識

自筆証書遺言の成立要件


  1. 遺言者が15歳以上であること
  2. 遺言者に遺言能力があること
  3. 遺言者本人が全て自筆で作成したこと
  4. 遺言の内容が書かれてあること
  5. 作成年月日が書かれてあること(西暦和暦どちらでも可)
  6. 遺遺言者の氏名が書かれてあること
  7. 押印されていること(認め印や三文判でも可ですが、実印で押印しましょう)

効力が生じる内容


  1. 相続分の指定
  2. 相続人の廃除
  3. 遺産分割方法の指定と分割の禁止
  4. 相続財産の処分
  5. 相続人の身分に関する効力(認知)
  6. 遺言書の執行に関する効力
  7. 相続人相互の担保責任の指定
  8. 遺言執行者の指定または委託
  9. 遺留分減殺方法の指定

無効になってしまう例


  1. 達筆すぎて読めない
  2. 相続人の名前を愛称(『いっくん』『まこちゃん』など)で書いている
  3. 書いた日付をきちんと書いていない(『令和元年1月吉日』など)
  4. 関係者にしか通用しない書き方をしている(『青森の土地を相続させる』など)
  5. 法律用語でない言葉で書いている(『〇〇を受け取ってください』など)
  6. 相続分を明示していない(『大部分を長男に』など)
  7. 『ここからここまでは長男、あとは次男』などと、適当な地図やイラストで描いている
  8. 夫婦で連名の遺言書(ひとりずつ作らないと無効)
  9. 自筆証書なのに本人が書いていない(代筆や口述筆記は無効)
  10. 認知症が進んでから書いた

推定相続人(法定相続人)


 法定相続人は推定相続人に過ぎません。実際に誰が相続するかは、遺言書がある場合は遺言書に従って、遺言書がない場合は推定相続人全員の合意により作成した遺産分割協議書によって決定されます。 確実に誰かに相続させたい、または、確実に相続人になりたいとお考えであれば、遺言書を作っておく(おいてもらう)必要があります。

【推定相続人】
配偶者は常に推定相続人になり、配偶者以外の者は次の順位で配偶者とともに推定相続人になります。 上位順位に該当者がいた場合はそれ以下の順位の者は推定相続人になれません。

 第1順位:子(すでに死亡している場合はその子、孫、ひ孫…)
 第2順位:親(すでに死亡している場合は祖父母、曾祖父母…)
 第3順位:兄弟姉妹(すでに死亡している場合はその子である甥姪まで)

※「子」とは血縁のある実子と養子のことです。配偶者の連れ子は含まれません。「親」には養子縁組した養父養母も含まれます。
※かっこ内は「代襲者」です。代襲者は死亡者に代わって推定相続人になりますが、遺言の内容は代襲できないので注意が必要です。 被代襲者が養子の場合、養子縁組の前に生まれていた子は代襲者にはなれません。

法定の相続割合


 財産をどのように分けようが自由です。 遺言書がある場合、または、遺産分割協議が調った場合は、法定の相続割合の出る幕はありません。 遺言書がなく、遺産分割協議もまとまらない場合は、法定相続もしくは調停ということになります。 法定相続とは、現金のように単純に分割できるものはは法定割合で分け、不動産などは法定割合で共有するということです。

【法定相続割合】
推定相続人が、配偶者と子の場合、配偶者が2分の1、子が残りを均等に分ける
推定相続人が、配偶者と親の場合、配偶者が3分の2、親が残りを均等に分ける
推定相続人が、配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が残りを均等に分ける

推定相続人が死亡していてその子どもが代襲する場合は、代襲者は親の相続分を均等に分けます。 推定相続人がひとりでも欠けた状態で行われた遺産分割協議は無効です。

遺留分


 推定相続人には最低限保証された相続割合があり、それを「遺留分」といいます。 推定相続人は、遺言書の有無にかかわらず、自分の相続分が下記の遺留分に満たない場合、多くもらった人に対して不足分を請求することができます。

 法改正により、結婚20年以上の夫婦の場合は遺言で譲り受けた住居は相続財産から除外され、遺留分の計算対象ではなくなりました。 配偶者は住居を離れる必要がないだけではなく財産の配分が増えますので、遺言書があるかないかで配偶者の老後が大きく変わることになります。

【遺留分】
相続人が、配偶者と子の場合、配偶者が4分の1、子は4分の1を均等に分ける
相続人が、配偶者と親の場合、配偶者が3分の1、親は6分の1を均等に分ける
相続人が、配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が2分の1、兄弟姉妹にはない
相続人が、配偶者のみの場合、2分の1
相続人が、子のみの場合、2分の1
相続人が、親のみの場合、3分の1
相続人が、兄弟姉妹のみの場合、なし

特別受益と寄与分


【特別受益】
 相続人のうち一部が特別受益(資金の援助や名義預金など)を得ていた場合、被相続人の合理的意思を推測し、相続人間の公平をはかるため、その特別受益分を加算して具体的相続分の算定を行います。 これを「特別受益の持戻し」といいます。 特別受益の持戻しは、相続人間の公平を図ると同時に被相続人の合理的意思を推測した算定方法ですから、 被相続人が持戻しを希望しない場合は、遺言で持戻しを行わないこともできます。 これを「特別受益の持戻しの免除」といいます。

 法改正により、特別受益の持戻しは過去10年間分に限定されましたので、特定の相続人に財産を多く渡したい場合は、早めに生前贈与しておきましょう。

【寄与分】
 子どもが介護等で特別の寄与をしても、その寄与分は親の扶養義務を理由に原則認められません。 寄与分を考慮してあげたい場合は、遺言でその分を増やした分割にしてあげるといいでしょう。

 法改正により、6親等以内の血族と3親等以内の姻族、および、その配偶者が介護を行った場合は、寄与分を請求できるようになりました。


原稿を自筆証書遺言にする方法

「実現する遺言原稿」のサンプル

 作成した遺言原稿の全文を手書きします。

 書き損じの修正には明確なルールがあり、その通りに修正しなければ無効になってしまいます。 疑いの余地を残さないためにも、書き損じたらページ丸ごと書き直すことをオススメします。

 自筆証書遺言の綴り方と封印の規定はありませんが、 複数ページになる場合は、各ページに番号をふり、ページ左側2か所をホッチキスで留め、全ページの折り目に割印(実印)を押しておきましょう。 封筒の表面に『遺言書 在中』と大きく書き、裏面には『開封を禁ずる この遺言書を遺言者の死後すみやかに家庭裁判所に提出して検認を受けること』、および、遺言書を書いた日付、および遺言者の住所氏名を書き、実印で封印しておけば、間違って開封されることはないでしょう。

※ 令和2年7月以降は自筆証書遺言を法務局で保管することができるようになり、法務局で保管した場合は家庭裁判所での検認が不要になりますので、公正証書遺言と同様、相続開始後すぐに手続きを開始できるようになります。 軽い認知症があって、無効訴訟を起こされた場合に備えて、公証人に有効性を証言してもらえるようにしておきたい等の理由がないのであれば自筆証書遺言で十分かと思います。 施行されたらすぐに法務局で保管しましょう。



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原稿を公正証書遺言にする方法

 公正証書遺言は、公証人に伝えた通りに作成されるだけです。しっかりした原稿を作成しておかなければならないことに変わりはありません。

「実現する遺言原稿」のサンプル

 公正証書遺言は公証役場で作成してもらいます。 作成した原稿を公証役場に持参して公証人に相談しましょう。 必要な書類や手順、費用などについては、そのときに詳しく教えてもらえます。 証人2名の用意が必要です。用意できない場合は公証人に相談してみるといいでしょう。
 作成日当日は、証人2名とともに公証役場に向かいます。 遺言内容の確認は、公証人による読み聞かせによって行い、遺言者、公証人、証人がそれぞれ署名捺印します。 最後に公正証書作成の手数料(下記参照)を支払って完了となり、正本と謄本の各1部が本人に渡され、原本は公証役場に保管されます。


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用意しておくもの


  1. 遺言者の戸籍謄本(生まれてから現在まで)
  2. 遺言者の印鑑登録証明書
  3. 相続人全員の住民票(または住所のメモ)
  4. 相続人以外に財産を遺す場合はその人の住民票(または住所のメモ)
  5. 不動産の登記簿謄本、固定資産税評価証明書
  6. 預貯金口座番号のメモ
  7. その他の遺言書に記載する財産がわかる資料のコピー(ゴルフ会員権、自動車車検証、宝石や絵画の鑑定書、貸金庫やお墓の資料など)
  8. 遺留分放棄の許可を受けた相続人がいる場合はその許可書
  9. 証人2名(相続人または未成年者じゃない人)の住所のメモ

公証役場で支払う手数料


この表で相続人ひとりずつの手数料を求めて合算します。
相続財産の価額公証人の手数料
百万円まで5,000円
~2百万円まで7,000円
~5百万円まで11,000円
~1千万円まで17,000円
~3千万円まで23,000円
~5千万円まで29,000円
~1億円まで43,000円
~3億円まで5千万円毎に13,000円
~10億円まで5千万円毎に11,000円
~10億円超5千万円毎に8,000円
相続財産の総額が1億円未満の場合は11,000円を加えます。 遺言者が入院中などで、公証人に出張してもらった場合は総額の1.5倍になります。 その他、用紙代数千円が必要になります。

不動産と預貯金の総額4,400万円を、妻と4人の子が相続する場合の例

妻の相続額は2,200万円なので手数料は23,000円、子ひとりの相続額は550万円なので一人当たり17,000円となり
23,000円 + (17,000円 x 4) = 91,000円
相続財産の総額が1億円未満なので11,000円が加わり、公証人に支払う手数料は10万2,000円となります。