遺言書作成マニュアル

遺言書の全体像


遺 言 書

私、犬養太郎は、次のように遺言する。

第1条 遺言者は、遺言者の下記財産を、友人猫田花子(東京都〇〇区〇町〇丁目〇番地〇号)に遺贈する。

①自宅の土地建物
 ~詳細の記載は割愛~
②愛犬ポチ(柴犬・オス)

第2条 受贈者猫田花子は、上記遺贈を受ける負担として、遺言者が長年育ててきた愛犬ポチの面倒を生涯大切にみること。 また、死後は手厚く埋葬する義務を負うものとする。

第3条 〇〇銀行の預金は長男一郎に相続させる。
 ~詳細の記載は割愛~

付言事項 猫田さん、息子の一郎の代わりにポチの面倒をみていただけることに深く感謝しています。 ポチのことをよろしくお願いします。

以上

平成〇〇年〇月〇日
東京都〇〇区〇町〇丁目〇番地〇号
遺言者 犬養太郎 (実印)
昭和〇〇年〇月〇日生
 これは実現されない遺言書の代表例ですが、形式はきちんとしています。

自筆証書遺言にする方法


 遺言書に付け入る隙を残せば、ほぼ間違いなく調停裁判へと進んでしまいます。 財産を託す相手が守られるよう、法的対策をシッカリしておきましょう

実現する遺言書にする8つの手順

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【 自筆と封印の注意点 】
 記載の形式は、上にある例を参考になさってください。全文を手書きしなければ法的効力は生じません。 (法改正により財産目録だけはパソコンでも作成できるようになっています。財産目録の書式は自由、全頁署名捺印要。)

 書き損じの修正には明確なルールがあり、その通りに修正しなければ無効になってしまいます。 疑いの余地を残さないためにも、書き損じたらページ丸ごと書き直すことをオススメします。

 自筆証書遺言の綴り方と封印の規定はありませんが、 複数ページになる場合は、各ページに番号をふり、ページ左側2か所をホッチキスで留め、全ページの折り目に割印(実印)を押しておきましょう。 封筒の表面に『遺言書 在中』と大きく書き、裏面には『開封を禁ずる この遺言書を遺言者の死後すみやかに家庭裁判所に提出して検認を受けること』、および、遺言書を書いた日付、および遺言者の住所氏名を書き、実印で封印しておけば、間違って開封されることはないでしょう。

※ 2020年7月以降は自筆証書遺言を法務局で保管することができるようになり、法務局で保管した場合は家庭裁判所での検認が不要になりますので、公正証書遺言と同様、相続開始後すぐに手続きを開始できるようになります。 軽い認知症があって、無効訴訟を起こされた場合に備えて、公証人に有効性を証言してもらえるようにしておきたい等の理由がないのであれば自筆証書遺言で十分かと思います。 施行されたらすぐに法務局で保管しましょう。

自筆証書遺言の成立要件


  1. 遺言者が15歳以上であること
  2. 遺言者に遺言能力があること
  3. 遺言者本人が全て自筆で作成したこと
  4. 遺言の内容が書かれてあること
  5. 作成年月日が書かれてあること(西暦和暦どちらでも可)
  6. 遺遺言者の氏名が書かれてあること
  7. 押印されていること(認め印や三文判でも可ですが、実印で押印しましょう)

効力が生じる内容


  1. 相続分の指定
  2. 相続人の廃除
  3. 遺産分割方法の指定と分割の禁止
  4. 相続財産の処分
  5. 相続人の身分に関する効力(認知)
  6. 遺言書の執行に関する効力
  7. 相続人相互の担保責任の指定
  8. 遺言執行者の指定または委託
  9. 遺留分減殺方法の指定

無効になってしまう例


  1. 達筆すぎて読めない
  2. 相続人の名前を愛称(『いっくん』『まこちゃん』など)で書いている
  3. 書いた日付をきちんと書いていない(『平成30年1月吉日』など)
  4. 関係者にしか通用しない書き方をしている(『青森の土地を相続させる』など)
  5. 法律用語でない言葉で書いている(『〇〇を受け取ってください』など)
  6. 相続分を明示していない(『大部分を長男に』など)
  7. 『ここからここまでは長男、あとは次男』などと、適当な地図やイラストで描いている
  8. 夫婦で連名の遺言書(ひとりずつ作らないと無効)
  9. 自筆証書なのに本人が書いていない(代筆や口述筆記は無効)
  10. 認知症が進んでから書いた

推定相続人(法定相続人)


 法定相続人は推定相続人に過ぎません。実際に誰が相続するかは、遺言書がある場合は遺言書に従って、遺言書がない場合は推定相続人全員の合意により作成した遺産分割協議書によって決定されます。 法定相続人だからといって安心していてはいけません。 確実に誰かに相続させたい、または、確実に相続人になりたいとお考えであれば、遺言書を作っておく(おいてもらう)必要があります。

【推定相続人】
配偶者は常に推定相続人になり、配偶者以外の者は次の順位で配偶者とともに推定相続人になります。 上位順位に該当者がいた場合はそれ以下の順位の者は推定相続人になれません。

 第1順位:子(すでに死亡している場合はその子、孫、ひ孫…)
 第2順位:親(すでに死亡している場合は祖父母、曾祖父母…)
 第3順位:兄弟姉妹(すでに死亡している場合はその子である甥姪まで)

※「子」とは血縁のある実子と養子のことです。配偶者の連れ子は含まれません。「親」には養子縁組した養父養母も含まれます。
※かっこ内は「代襲者」です。代襲者は死亡者に代わって推定相続人になりますが、遺言の内容は代襲できないので注意が必要です。 養子縁組の前に生まれていた子は代襲者にはなれません。

相続割合について


 財産をどのように分けようが自由です。 遺言書がある場合、または、遺産分割協議が調った場合は、法定の相続割合の出る幕はありません。 遺言書がなく、遺産分割協議もまとまらない場合は、法定相続もしくは調停ということになります。 法定相続とは、現金のように単純に分割できるものはは法定割合で分け、不動産などは法定割合で共有するということです。

【法定相続割合】
推定相続人が、配偶者と子の場合、配偶者が2分の1、子が残りを均等に分ける
推定相続人が、配偶者と親の場合、配偶者が3分の2、親が残りを均等に分ける
推定相続人が、配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が残りを均等に分ける

推定相続人が死亡していてその子どもが代襲する場合は、代襲者は親の相続分を均等に分けます。 推定相続人がひとりでも欠けた状態で行われた遺産分割協議は無効です。

遺留分


 推定相続人には最低限保証された相続割合があり、それを「遺留分」といいます。 推定相続人は、遺言書の有無にかかわらず、自分の相続分が下記の遺留分に満たない場合、多くもらった人に対して不足分を請求することができます。

 法改正により、結婚20年以上の夫婦の場合は遺言で譲り受けた住居は相続財産(遺留分の計算対象)から除外されます。 それにより、配偶者は住居を離れる必要がないだけではなく財産の配分が増えますので、 遺言書があるかないかで配偶者の老後が大きく変わることになります。

【遺留分】
相続人が、配偶者と子の場合、配偶者が4分の1、子は4分の1を均等に分ける
相続人が、配偶者と親の場合、配偶者が3分の1、親は6分の1を均等に分ける
相続人が、配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が2分の1、兄弟姉妹にはない
相続人が、配偶者のみの場合、2分の1
相続人が、子のみの場合、2分の1
相続人が、親のみの場合、3分の1
相続人が、兄弟姉妹のみの場合、なし

特別受益と寄与分


【特別受益】
 相続人のうち一部が特別受益(資金の援助や名義預金など)を得ていた場合、被相続人の合理的意思を推測し、相続人間の公平をはかるため、その特別受益分を加算して具体的相続分の算定を行います。 これを「特別受益の持戻し」といいます。 特別受益の持戻しは、相続人間の公平を図ると同時に被相続人の合理的意思を推測した算定方法ですから、 被相続人が持戻しを希望しない場合は、遺言で持戻しを行わないこともできます。 これを「特別受益の持戻しの免除」といいます。

 法改正により、特別受益の持戻しは過去10年間分に限定されますので、 特定の相続人に財産を多く渡したい場合は、早めに生前贈与しておきましょう。

【寄与分】
 子どもが介護等で特別の寄与をしても、その寄与分は親の扶養義務を理由に原則認められません。 寄与分を考慮してあげたい場合は、遺言でその分を増やした分割にしてあげるといいでしょう。

 法改正により、6親等以内の血族と3親等以内の姻族、および、その配偶者が介護を行った場合は、 寄与分を請求できるようになります。


公正証書遺言にする方法

 公正証書遺言は、遺言書が真正であることを疑う余地がないという点で有利です。 認知症等で遺言書の偽造を疑われる可能性がある場合や、無効主張をされそうな事案では公正証書遺言にされることをオススメします。
 遺言の内容がまとまり(原稿が出来上がり)、書類が用意できたら、事前に公証人と打合せを行います。場合によっては数回になる場合があります。 作成日当日は、証人2名とともの公証役場に向かいます。 遺言書の確認は、公証人による読み聞かせによって行い、遺言者、公証人、証人がそれぞれ署名捺印します。 最後に手数料を支払って完了となり、遺言書は公証役場に保管されます。

用意しておくもの


  1. 遺言者の戸籍謄本(生まれてから現在まで)
  2. 遺言者の印鑑登録証明書
  3. 相続人全員の住民票(または住所のメモ)
  4. 相続人以外に財産を遺す場合はその人の住民票(または住所のメモ)
  5. 不動産の登記簿謄本、固定資産税評価証明書
  6. 預貯金口座番号のメモ
  7. その他の遺言書に記載する財産がわかる資料のコピー(ゴルフ会員権、自動車車検証、宝石や絵画の鑑定書、貸金庫やお墓の資料など)
  8. 遺留分放棄の許可を受けた相続人がいる場合はその許可書
  9. 証人2名(相続人または未成年者じゃない人)の住所のメモ

公証役場で支払う手数料


相続財産の価額公証人の手数料
百万円まで5,000円
~2百万円まで7,000円
~5百万円まで11,000円
~1千万円まで17,000円
~3千万円まで23,000円
~5千万円まで29,000円
~1億円まで43,000円
~3億円まで5千万円毎に13,000円
~10億円まで5千万円毎に11,000円
~10億円超5千万円毎に8,000円
※この表で相続人ひとりずつの手数料を求めて合算します。 相続財産の総額が1億円未満の場合は11,000円を加えます。 遺言者が入院中などで、公証人に出張してもらった場合は総額の1.5倍になります。 その他、用紙代数千円が必要になります。

不動産と預貯金の総額4,400万円を、妻と4人の子が相続する場合の例

妻の相続額は2,200万円なので手数料は23,000円、子ひとりの相続額は550万円なので一人当たり17,000円となり
23,000円 + (17,000円 x 4) = 91,000円
相続財産の総額が1億円未満なので11,000円が加わり、公証人に支払う手数料は10万2,000円となります。